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就職活動の真相

両者が税金を無視して利子の3万円を利得と考えれば、この利得水準は彼のアクションのみに依存して決まる。 他者がどれだけ預金するかは、彼の利得に影響しない。
したがって、この投資決定はゲーム的状況において行なわれたわけではない。 AとBが互いに協力しあう場合に相当する。
Aが情報を提供し、Bも同じことをする、ギブ・アンド・テイクの場合である。 それに対して右上と左下は、一方のプレイヤーが他方に利用されるだけに終わる場合である。
英語には、利用されるだけに終わる人間を表すサッカーという単語が存在する。 日本語にも「お人好し」のような言葉がある。
アメリカ人はサッカーになることを日本人以上に嫌うように思われる。 中国人は、自分の子供に対して、絶対他人に利用されないよう教育するという。
(日本には「負けるが勝ち」という諺もあり、伝統的には必ずしも「お人好し」を噺笑してはこなかったといえるかもしれない。)そこでは、BのアクションがIであるかUであるかにかかわらず、AはUをとったほうが有利となっている。 このゲームはAとBに関して対称的なので、AとBの役割を入れ替えても同様なことが成立する。
故にAとBはともにUをとることになって、各プレイヤーの利得は2となる。 これとは別に、万一AとBがともにIをとることができれば、各プレイヤーの利得は3となり、先の利得より大きくなる。
各プレイヤーが独立して自己の利益を追求するかぎり、各プレイヤーの利得は2になる。 利得表の右下は、各プレイヤーが自力で仕事し、個人の独立性と非協力性が実現される場合を表している。

戦闘に即して表1‐2の利得表を解釈することもできる。 そのときは、各部隊をプレイヤーとし、Iを「相手に損傷を与えない攻撃をする」、Uを「相手に損傷を与える攻撃をする」と解釈する。
お互いに損傷を与えない場合、右下の場合はお互いに損傷を与える場合であるから、各部隊にとって、左上の場合のほうが右下の場合よりも利得が大きくなる。 一方がI、他方がUをとる場合は、次のように考えることができる。
Iをとる部隊は相手に損傷を与えないわけであるから、Uをとる部隊は攻撃しやすく、その攻撃力も戦闘によってほとんど減じない。 それに対してIをとる部隊は大きな損傷を受ける。
したがって右下の場合とくらべると、Iをとる部隊の損傷は大きく利得は小さくなる。 またUをとる部隊は損傷を受けることなく戦功をあげたり、相手の戦力を弱体化させたりすることができるので、左上の場合より大きな利得を得ることができる。
読者の理解を深めるために、代表的な囚人のジレンマの例を追加しておきたい。 近接するA国とB国が、「非武装(あるいは非核保有)」と「武装(核保有)」の選択肢に直面する場合が、その例である。
Bが「非武装」を選択したと仮定してみよう。 Aが「非武装」を選択すれば軍事費支出が不要となるが、「武装」を選択すればBを威圧したり簡単に攻撃できたりするので、軍事費支出を上回る利益を得ることができよう。
次にBが「武装」を選択したと仮定してみよう。 Aが「非武装」を選択すれば、軍事費支出が不要となるが、Bに威圧されたり攻撃されたりする可能性が生じてくる。

Aが「武装」を選択すれば、軍事費支出は必要となるが、このような可能性ないしは心理的費用を払拭することができる(実際にはある程度残るかもしれない)。 同様なことはAとBの役割を入れ替えても成立する。
したがって両国とも「武装」を選択することになる。 互いに「武装」すると相手の攻撃を抑止できるが軍事費がかさみ、互いに「非武装」でいて相手に攻撃されることのない場合より利得が小さくなる。
囚人のジレンマ・ゲームの基本的特徴は、かりに両プレイヤーがお互いに協力して適切な戦略Iをとることができれば各自の利得は大きくなるのに、協力することができず各自が独立して自己の利益を追求する(Uをとる)ため、結局両プレイヤーとも小さい利得しか実現できないことにある。 われわれの日常生活を一瞥してみれば、このような現象が多数存在することに気づくであろう。
個人的には協力したいと考えていても、相手が協力してくれず単に利用されるだけに終わってしまうことを恐れて協力が実現されない現象は、囚人のジレンマ・ゲームの例である場合が多い。 さらに職場の例を追加すれば、同僚が忙しいときにその仕事を手伝う(助け合う)否か、同僚が席を外しているときにかかってきた電話の伝言を適切に行なうか否か、当初合意した期日までに仕事を仕上げるか否か、一般に約束を守るか否か、といった意思決定は、すべて囚人のジレンマ・ゲームになりうる。
表1‐2を再度使って、多忙時の同僚同士の助け合い問題を考えて承れば、次のようになる。 まず明らかに、両者で助け合いをした場合のほうがそうしない場合より満足度は大きくなるので、同表のように左上の利得は右下のものより大きい。
一方が助けて他方が助けない場合は、助けたほうは時間的損失や精神的苦労のために、右下の利得より低い利得しか得ることができない。 助けられたほうは、自分の仕事に専念できたり、相対的に高い生産性を達成できたりするため、左上の利得より高い利得を達成できる。
囚人のジレンマ・ゲームにほかならない。 繰り返し囚人のジレンマ・ゲーム囚人のジレンマ・ゲームが何回も繰り返される場合は、右と大いに事情が異なる。

すなわち、各プレイヤーが独立して自己の利益を追求しても、協力関係が成立することがある。 ゲームが何回も繰り返されるためには、同一のプレイヤー同士が長期間にわたって相互依存的な関係を維持できなければならない。
西部戦線のように戦線が豚着状態にあることは、この必要条件を満たすと考えうる。 また終身雇用制のように労働者が長期間にわたって職場を同じくすることも、この条件を満たすといえる。
囚人のジレンマ・ゲームが繰り返されると、なぜ協力が成立しうるのかを理論的に考察してみよう。 まず囚人のジレンマ・ゲームが無限回(永遠に)繰り返される場合を検討してみよう。
比較的容易に理解できる場合である。 情報提供ゲームが無限回行なわれるということは、たとえば毎月毎月永遠に、新しい有用情報を相手に提供するかどうかの意思決定が行なわれることを意味する(仕事の内容も毎月少しずつ変わると考える)。
普通は情報内容によって利得が変化するので、毎月同一の利得表に直面するということは非現実的であるが、ゲームの理論では現実を抽象化するため、ここでは毎回同じ利得表を持ったゲームが繰り返されると仮定する。 ゲームが何段階にもわたって繰り返されると、各プレイヤーがある段階においてアクションを選択するときに、それ以前の段階で自他がどのようなアクションを選択したかを考慮に入れて意思決定をすることができる。
見方を変えれば、各段階においてアクションを選択するときには、後の段階で自他が行なうアクションの選択にどのような影響を与えるかを考慮しなければならないことになる。 こうした状況の下では次のような戦略が可能となる(ここで戦略とは、第一段階のゲームが開始される前に各プレイヤーが決めておく、一連の行動方針〈各段階のアクションのとり方〉を意味する)。
すなわち、「第1段階ではIのアクションをとる。

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